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2010年5月30日日曜日

「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」を観た

公式サイト

ジョニー・トー監督によるクァイ三部作を締めくくる「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」。
やたらと長い邦題ですが、原題はシンプルで「復仇」(Vengeance)。
恥ずかしながらトー監督の映画は初体験でしたが…本当に面白かったです。これは中毒になりそうだ。
客層の方も、いかにも香港映画ファンといった感じのコアな気を醸し出している人が多かったかな?
以下はネタバレ込みの感想。

とにかくガン・アクションを軸に痺れる場面が目白押しな中に適度なユーモアが散りばめられ、
そこへ来て繊細で幽玄な映像美も重なることで、
独特の化学反応が生じた味わい深い映像世界に酔わせられもし、
また、劇場の床も揺さぶるほどに轟く銃声の強烈さもストーリーが進むほどにザクザクと鋭いインパクトを刻み、
うーん…何とも形容しがたい小気味良さというかリズム感を持った内容です。
月並な表現ではありますが、まずコッテリ濃いけど、旨くて癖になる味というような。

主要キャストも殆どジョニー・トー作品ではお馴染みとのことで、絶妙で魅力的でした。
強面ながら義理堅く洒脱な面も垣間見せるクァイ(アンソニー・ウォン)に、
クールな優男といった雰囲気のチュウ(ラム・カートン)、
そしてあくまで三枚目をキープしつつ軽快な動きも見せるフェイ・ロク(ラム・シュー)からなる殺し屋三人組と、
彼らに絡むコステロ演じるは、フランスの往年の名優・ジョニー・アリディ…。
当初コステロ役はアラン・ドロンが演じる予定だったそうで、この辺り評価が割れているようで、
正直なところ自分も最初のあたりは「?」という感じだったのですが、
実際に鑑賞し終えてみれば、バランスとしては結果的にアリディで良かったように思います。

絵的な見所も多くて冷静に書くのが難しいくらいなのですが、
コステロが元・凄腕の殺し屋だった事が判明した後、ガラクタの自転車目がけて4人で代わる代わる射撃すると、
その威力でふらふらと前進していく自転車…その姿に彼らの関係を重ねてみたりとか、
夜のキャンプ場、4人が娘家族の仇である殺し屋グループの家族らとかち合い、見下ろすその一時の団欒の光景から、
ひとりの子供が投げた虹色のフリスビーが4人の傍を飛んでいくところ、
そこでの月が雲の間から隠れては現れる空の下、落ち葉舞う中繰り広げられる非情の銃撃戦など、何しろ美しい。

さらには映画も佳境に入ったところでの衝撃…ファン側とクァイ側入り乱れての、
双方サイコロ状にプレスした巨大紙ゴミを盾にしながら、それをゴロゴロ転がしての決戦!
決定的に悲壮感漂うものであろうと予想する場面で、まさかのコント寸前のようなバトル…これには笑った。
何しろ前半の山場である月夜のドンパチと、後半のその、降り注ぐ紙くずの雨の中での決闘のコントラストが素晴らしい。
印象的なシーンが沢山登場する本作でも最も目に強く焼き付くシーンだと思います。

また、降りしきる雨と夜の闇がとても魅力的に描かれていたりもして、ちょっとブレードランナーを思い出しました。
ラストでコステロが屈託なく笑い声を上げる姿には少し戸惑いもしましたが、全体としてはとても満足のいく作品です。
これを機会に、他のジョニー・トー作品にもぜひ触れてみたい…!と強く感じました。おすすめ!

【参考】冷たい雨に撃て、約束の銃弾を - Wikipedia

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